今風なTeX執筆環境の構築と運用
1. はじめに
数学・工学系の研究者や学生にとって、昭和の頃から、TeXは論文執筆(国際会議や卒論等)やレポート作成に欠かせないツールです。本記事では、クラウド環境を活用した最新のTeX執筆環境の構築方法や、代表的なオンラインTeXサービス(Overleaf・Cloudlatex)との比較を交えて解説します。
IEEE CollabratecのOverleaf 無料特典も終了してしまい、多くの若手研究者が今後を悩んでいる人も居ると思います。現状を整理し、Microsoftのクラウドサービスを用いたTeX執筆環境の構築についても説明し、今後の年度末の卒論・修論・博論などの執筆環境が進化できることを願っています。
2. 基本的な用語解説
(1) TeXとは?
- TeX(テフ): 数式表記を得意とする高品質な組版システム。
- LaTeX(ラテフ): TeXの上に構築された文書作成システムで、より使いやすい。
(2) クラウドTeXとは?
- クラウド上でTeXを動作させ、インターネット経由で編集・コンパイルできる環境。
- 代表例: Overleaf、Cloudlatex。
(3) コンテナベースのTeX環境
- Dockerを利用したTeX環境: TeX LiveやMiKTeXをDockerコンテナで管理。
- 利点: 環境構築が容易で、再現性が高い。
(4) CI/CDとTeX
- **CI/CD(継続的インテグレーションとデリバリー)**をTeX執筆に応用することで、自動コンパイルやバージョン管理が可能。
- 代表例: GitHub Actions + TeX Live。
3. クラウドTeXサービスの比較
サービス名 | 価格 | 機能 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|
Overleaf | 無料プランあり、有料プラン$15/月~ | リアルタイム共同編集、Git連携 | 直感的なUI、豊富なテンプレート | 無料プランは制限あり |
Cloudlatex | 無料プランあり、有料プラン$5/月~ | 日本語環境に最適化 | 日本語対応が強い | 利用者が少ない |
Azure DevOps + VS Code + Docker | 従量課金 | フルカスタマイズ可能 | ローカル環境と統一、CI/CD対応 | 環境構築の手間がある |
4. Microsoftクラウドを用いたTeX執筆環境の構築
(1) Azure + VS Code + Remote Containers
- Azureアカウント作成(Azure公式サイト)。
- Azure Virtual Machines(Linux)をデプロイ。
- VS CodeのRemote - Containers拡張機能を利用。
- Dockerを利用してTeX環境を構築(
texlive/texlive
イメージなど)。
(2) CI/CDを用いた自動コンパイル環境
- GitHub Actions + TeX Live でプッシュ時にPDFを自動生成。
- Azure DevOpsを利用して継続的なビルド・デプロイを実現。
(3) OneDriveを活用したドキュメント管理
- OneDrive上に
.tex
ファイルを保存し、複数デバイスで編集可能。 - Overleafとの連携も可能(OneDrive経由でファイルをアップロード)。
5. まとめ
- 手軽に利用するならOverleaf・Cloudlatex。
- 利用頻度や共同編集などを鑑みて、無料のままとするか要判断。
- 自由度の高い環境を構築するならAzure + VS Code + Docker。
- 自前環境となるが、一番自由度が高く、満足度とカスタマイズ性には優れている。
- その上で、CI/CDを活用するとTeX文書の管理・コンパイルが効率化できる。